Book Review of KARNA


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『天国旅行』

三浦しをん/著 新潮社 定価1400円+税

生と死を見つめる七つの物語

心中をテーマにした、七つの短編集。そういえば、2004年に解散したバンド、ザ・イエロー・モンキーの曲に、『天国旅行』があったなあと思ったら、やはりタイトルはそこからとったらしい。
心中と言っても、男女が恋愛の果てに死を選ぶというものばかりではない。最初の『森の奥』は、中年男性の明男が人生に絶望して、あの有名な自殺の名所、青木ヶ原樹海に入るのだが、そこで一人の青年に出会って…。
『遺言』は、心中願望のある妻を持つ夫の遺言という形で、人生を振り返る物語。「やっぱりあのとき死んでおけばよかったんですよ」と58回も繰り返す妻にうんざりしながらも、そして幾度かは死にそうな目に合いながらも、妻を愛しているから、その度に危機を乗り越えてきた男。
そのほか、祖母の初盆にやってきた客は、実は祖母の別れて暮らしていた息子の幽霊だったという、ホラーだけれど心に響く『初盆の客』や、『君は夜』の前世の夢を繰り返し見て、前世で心中した恋人の生まれ変わりと信じる男に、のめり込む女。前世でもそうだったように、男の不実な態度に絶望しても、手放すことが出来ない。
灯油をかぶって焼身自殺した少年の、彼の恋人と彼に片思いをしていた少女が、少年の自殺の原因と心の闇を追う『炎』。死んでしまった恋人と暮らす若者、『星くずドライブ』。一家心中の生き残りとして生きてきて、恋をすることも出来ず、未来を信じられない男、『SINK』。
様々な生と死を見つめる物語。それぞれ、全く違う物語だけれど、死を思う人、死に隣り合う人は皆、強烈に生を渇望しているのだと分かる。「死にたい」というのは、「生きたい」ということなのだ。
この世とあの世の境目に立った時に、激しく燃え上がる愛と生の輝きを綴った珠玉の短編集だ。(H)
(カルナ2010年9月号より)

『夜行観覧車』 

湊かなえ/著 双葉社 定価1500円+税

愛しさも憎しみも、家族だから…。

高級住宅地・ひばりヶ丘に住むエリート一家に、衝撃的な事件が発生した。医師の父親を、母親が殺害したというのだ。有名私立中学に通う次男は行方不明に。はたして、事件の動機と真相は? 一人暮らしをしている大学生の長男と、有名女子高に通う長女、行方不明の次男はこれからどうなるのか?
向かいに住む一家は、母親の希望で無理してひばりヶ丘に一戸建てを購入した、一般サラリーマン。周りからは浮いている。一人娘は中学受験に失敗して、反抗的だ。たびたび、母親に向かって癇癪を起こし、大声をだす娘。心配してか興味からか、様子を見にやってくる隣の主婦。彼女は裕福で、いかにもひばりヶ丘の住人だが、事件のあった家に悪質なビラを貼ったり、窓ガラスを割ったりという暴挙も。努力してひばりヶ丘のステイタスを上げてきたのに、迷惑を被った近隣住民の当然の権利、と開き直る。海外に住む息子とはあまりうまく行っていないらしい。
『告白』とは全く違う手法で描く、家族小説。次々と起こる思いもかけない出来事に引き込まれる。家族だからこそ許せること、家族だからこそ許せないこと…。愛も憎しみも増幅されてぶつかり合う家族。誰もが犯罪者になり得る怖さも感じる。(H)
(カルナ2010年9月号より)